『獣の列島』 対 『獸虫列島』


 
 もともとも同じ作品なんだから、「対」もくそもないような気はしますが、まぁ便宜上ということで。
 
 というわけでここでは、われらが『獣の列島』の中華民国(台湾)版であるところの『獸虫列島』について、オリジナルとの比較を中心にみていこうと思います。

 まずは基本データを。

『獸虫列島』

 訳者 蘇文輝

 出版 宇宏出版社

 発行年月日 中華民国84年(1995年) 4月10日(初版)

 上記のデータは1巻のものです。日本で獣の列島が発行されたのは1991年のことだから、4年たって扶桑の島から蓬莱の島に渡ったということですね。早いのか遅いのかよくわかりませんが。

 訳者は蘇文輝さん。といってもどういう素性の人か全然わかりませんけど。
 
 出版元である宇宏出版社のサイトでもないかと検索してみましたが、どうもみつからんですね。いろいろ日本の漫画を翻訳して出版してる会社らしいことはなんとなくわかりました。
 
 で、内容面は北京語に翻訳されてるだけで『獣の列島』とまったく同じ… といいたいところですが、結構修正が入ってます。台湾では日本よりもかなりエロ方面について厳しく規制されてるようですね。

 まず、陰部の描写はNGらしいです。これはまぁ日本でもモロなのはダメですけど、台湾では『獣の列島』1巻の初期バージョンみたいな描写なんてのは論外なようです。そればかりか、1巻修正後のような消し方でもダメっぽい。とにかく、布に包まれていない股間がコマの中に描かれること自体がNGらしく、例外なくホワイトで塗り潰されたり、別のコマの絵をカット&ペーストして被せるなどの処置がなされています。さらに修正対象のコマがページ内に多いと判断された場合は、ページごと削除するという荒技も行われています。

 当然、オリジナルに較べてページが間引かれることになるので、1巻の終盤を2巻の冒頭部分が浸蝕し、バイクで転倒後に亜夜美が浩二に肩を貸す場面で1巻が終わるという変なことになってます。

 で、さらに「厳しいなあ」と思わされた点ですが、なんと乳首の描写もNGのようです。つまり、乳首が明確に描かれているシーンは、ホワイトで塗りつぶされ、その上からペンで輪郭線を修正されたりしているのです。しかもけっこう雑。
 これはオドロキですね。もはやエロマンガとしての体を成していない気もするんですが、他のエロマンガの翻訳版もこんな感じなんでしょうか。それとも、獣の列島が日本で18禁指定じゃなかったために、向こうで成人漫画(というような区分が向こうにあるのかどうか知らないけど)基準で発行できなかったとかそういう理由なんでしょうか。…でも奥付には「青年紳士系列」ってあるんですよね。うーん。

 とうわけでエロマンガとしては骨抜きにされてる感のある『獸虫列島』ですが、グロ系描写の方はどうかというと、こっちは全然問題にされてません。冒頭の結香レイプシーンがカットされまくりなのに対し、その後のイカレ妊婦の腹が破れる出産シーンにはなんの修正もなし(なんと、こんなやつの乳首まで律儀に消してある!)。宮坂病院で幼女の首が飛ぶシーンもまったく変更無し。グロについては寛容なのかしらん。

 というわけでエロ関係の修正部分について、具体的にみてみましょう。

獣の列島でのページ 獸虫列島での修正
p.20 結香
 
左上コマ

 ワームの触手にとらわれた結香。乳首を消される。

p.21 結香 上コマ

「うぐっ!」

 乳首に修正。陰影、乳輪を消される。ただ乳首がかなり隆起している絵だけに、シルエットは消しきれず、ほぼそのまま残っている。



下4コマ

(ギュイッ グイッ グイッ)「いっ、いたっ! ううっ!」(ググッ)

 乳首のトーンを消されているが、輪郭は消されず不完全な修正。触手が乳首に吸い付き弄ぶというシーンだけに、乳首自体を消すことはできなかったということか?

p.22-25 結香

結香強制開脚。パンツを触手が溶かし、露わになった陰部にペニスを突き立てる。容赦ない突きの後、射精。

4ページまとめて削除。

 このようにストレートに挿入を描いたシーンは消されてしまうようだ。

 (ただ、23ページ真ん中にある結香の目のアップは、なぜか後に予想外のシーンで使われることになる。)

p.39 結香 浩二とワームの戦いをバックに、気を失って横たわる結香

 乳首全消し。

p.58 亜夜美 「あ…あ…」

 ワームに犯される妄想にとらわれる亜夜美
 乳首全消し。

p.59 亜夜美 「うっ…うっ…知らなきゃ…よかった…」

 浴槽に寄りかかり、嗚咽する亜夜美。
 小さなコマであるにもかかわらず、めざとく乳先を消している。 

p.68 看護婦 「ひいっ!」(ズプッ)

 ワームに犯される看護婦。
 乳首消し、および股間にも消し。液の描写もなし。



(グププ)

 挿入された股間のアップだが…
 股間も淫液もワームのペニスも消されているため、コマには擬音と汗だけしか残っていない。ほぼ真っ白。
 これではほとんど何も描いてないと同じである。
 

p.69 看護婦 「ああああっ!!」

 ワームに犯され、絶叫する看護婦。

 乳首が消され、汚く輪郭修正されているが、なぜか尻肉越しに見える挿入描写にはまったく手が加えられていない。
 獸虫列島ではっきり挿入シーンとして残っているのはこのシーンだけかもしれない。

p.72 亜季 左上コマ

(ブチ!)
 ブラジャーを剥ぎ取られる亜季

 オリジナル版では見事なトーンワークで表現されていた亜季の乳首だが、消されてしまっている。



下コマ

(ずるっ) 「ああっ!」

 ワームに体勢を強制的にかえられるも、なすすべなしの亜季

 乳首に修正。乳輪をホワイトで消し、さらに乳先の隆起を消すために、太いペンで輪郭線を修正している。

 本人の意思に反して無理矢理に乳房をさらけ出されたにもかかわらず、望みもしない検閲の目に晒され「卑猥なモノ」の烙印をその乳首に押されてしまった亜季… 修正されたらされたで、そそる面を持つキャラである。
 

p.73-74 亜季

(グイッ)
(ピーーーーーッ)
(ビリビリッ)
(ググッ)
「やめてェェ!!」
「うっ!」(ビクッ!)
(ズウッ!!)
「あーーーーーーーーーーーっ!!!」

パンストを裂かれ、パンツ越しにワレメを晒したあげく、パンツを引き裂かれ、バックから挿入される亜季

2ページまとめて削除。

 無論、辱められた亜季の哀れな姿が人目に触れないように…という憐憫から消されたわけではない。 たかがエロマンガキャラにそんな配慮などするわけもなく、ただ単にバックでの挿入描写が卑猥だから消されたということだろう。

 パンスト切り裂き描写や、パンツ上からわかるモリマン描写は、亜季陵辱の過程での大事なポイントなのだと思うが、残念ながら台湾の読者はその存在を知らないわけだ。
 

p.75 亜季 右上コマ

(ズプッ!ズプッ!)
ワームのペニスで突きまくられる亜季のマ○コ…

 明確な挿入シーンなので、当然修正が入る。
 ただ、ホワイトで消しただけという生やさしいモノでなく、全然関係ないコマをカット&ペーストして、亜季のマ○コを隠してしまうという荒技がとられている。
 
 亜季のマンコを隠しているのは、なんと23ページ真ん中にあった結香の涙目のアップ。目のアップだけだから、何も知らない台湾読者ならキャラが違っても騙せると考えたのだろうか?
 髪にトーン処理でもすれば、もう少し自然に見えただろうが…。
 
 まぁ未将崎キャラ同士だから、知らない人は普通に読んでしまうかも知れない。ただ、漫画のコマ割りとしては極めて不自然である。



中段コマ

(グチュッ! グチュッ! グチュッ)
「はうっ!」「はっ!」「…!」

 これまで同様にホワイトで乳首が完全に消されている。



下段コマ

(ズッ!ズッ!ズッ!)
「きゃああっ!!」

 バックからワームに犯されている亜季の全身を描いたコマ。

 挿入描写はNGという原則通り、ここにも修正。亜季の尻肉を流れ落ちる淫液は消され、その尻肉越しに見えるワームのペニスはホワイトで全削除されている。
 さらに、そのままでは不自然になると思ったか、なんと亜季のその突き上げられたお尻の上に「ズッ」という擬音がカタカナで新たに描き加えられ、結合部分を完全に隠すような処理がなされている。
 
 右上のコマもそうだが、亜季の凌辱描写には、かなり手の込んだ執拗なまでの修正が加えられている。
 

p.90 亜季 (亜季を守ってやってくれ)

 父の最期を看取った亜夜美の手前で、気を失って倒れている亜季。

 オリジナルでは上向きでツンと立った乳首が描かれていたが、ホワイトで消されている。

 なお、86ページでも同様に気を失った亜季が描かれていたが、ここでの乳首はトーン処理のみでペン入れされてなかったためか、獸虫列島でも修正なし。

p.95 看護婦 右上コマ

 看護婦に挿入されているワームのペニス

 擬音と上下のグラーデーション状のトーンを残して全削除。絵が何もないコマになっている。



左上コマ
 「ひいいいいいい」

 ワームに犯されている看護婦。
 乳首のトーンに消し。
 

p.96 不詳 左下コマ

 女陰に挿入されるワームのペニス。
 淫液とワームの肉棒根元部分と擬音を残し、あとは削除。
 ただ、クリトリスの形が残ってしまっている。
 

p.97 不詳 右下コマ
 
 ワームに犯される女。

 乳首削除。

p.104 亜夜美 (バツン!)
「いやあああああ!」

 ワームに捕まり、縞パンを晒される亜夜美。

 乳首に消し。
 
 関係ないですが、亜夜美ではこのコマが一番抜けます。私。

p.105 亜夜美 左下コマ
「ああっ!」

 ワームの触手が亜夜美の両乳首に狙いを定め、迫る。

 乳首全削除。何に対して亜夜美が「ああっ!」と叫んでいるのかわからなくなってますね。
 

p.106 亜夜美 上コマ
(ギチチチッ!)

 亜夜美の乳首を責める触手。

 乳首をホワイトで消し、輪郭線修正。



中コマ
 
 なぜか修正無し。


下2コマ

 触手にパンツを破られるシーンのはずなのだが、この2コマ、全削除。
 かわりに、107頁下段コマの、ワームにのしかかられ「ひっ!」と叫んでいる亜夜美の絵がここにペーストされている。
 
 むろん修正した上でのペーストで、亜夜美の下半身がとワームの腹がまとめて消されているため、変な絵になっている。

 展開としては、106頁下段の2コマと、107頁上段の「あああっ!」のコマがまるごと削除されたということ。
 
 ただし、107頁上の「あああっ!」のコマについては、この後予想外の場所に流用されることになるのだが…
 

p.108-109 亜夜美

見開きでの亜夜美への挿入シーン
「いやあああああ!」
 


 108頁は全削除。
 おそらくこのページを消したくて、106〜107ページにさっきのような加工をしたのだろう。

 109頁の亜夜美の上半身は残ったが、当然乳首は全消し。
 下のコマの挿入場面は、ワームの肉棒が消されているが、なぜかクリとそれに巻き付いた触手は無修正。
 

p.114 亜夜美 亜季と抱き合う亜夜美

 亜夜美の乳首消し。

p.161-162 結香

「お父さん…らしいね」
「ああ いい親父だった」
(だがな…亜夜美)中略(米軍なんかじゃねぇ)


 この2頁まとめて削除。
 亜夜美と浩二が、宮坂源一郎の存在を通じて心を通わす重要な場面…なんだが、162頁に結香の挿入シーンが回想で描かれているため、1枚まとめて削除となったようだ。

 しかし「米軍なんかじゃねぇ」の台詞がないと、「何かもっと大きな力が動いている!!」(163頁)の台詞が唐突な気がします。しかしどうも「有一股更大的力量在背後控制著!!」という訳から見るに、とくにそのへんへの配慮はないみたい。
 

以下つづく 以下つづく
まだ途中です。


 



TOPへもどる